-撮影環境論

近年画質で損しているスピナーというのはめっきり少なくなった
安価で高性能なカメラを手に入れることが容易になったからだ
画質向上に伴い、撮影環境による見栄えの変化について
多少なりとも知っておく必要が出てきたように思う

ここではペン回しにおける撮影環境、カメラの特性などを挙げ、
よりよい動画撮影が行えるようになってほしいと思う



■背景


まず第一に散らかっている背景と、ほぼ均一な背景
どちらがよりペン回しを見ることに集中できるだろうか
無論後者である

余計なモノが映っていないのが理想だがそれが難しい環境ももちろんあるだろう
その場合でも整っていることが重要である
同じ本が置かれているのであっても散らかっているのと綺麗に並べられているのでは大違いだ
清潔感というのは何においても重要で、印象は大きく変わるものだ

散らかっている背景では、置かれているモノに目が向かいやすい
相当注意して動画を見よう、という意志が無い限り無意識的に
何が置いてあるのか、見ようとしてしまう

特に文字が見えるモノは要注意で
よっぽどの意味がない限り画面から外した方がよい
文字の持っている力は思っているよりも相当大きい
作品の雰囲気も左右しかねない

背景の持つ色もまた重要である
自分の背景に合わせたペンを使うことも、見栄えをよくするポイントであるだろう
何か意図がある上ではその限りではないのだが

白っぽい背景に黒っぽいペンというのはペンが非常に細く見えてしまう
明度対比による収縮が起こってしまうからだ
逆に背景を黒に近づけていけば、黒いペンでも収縮しない
黒っぽい背景に白いペンは逆に膨張して見えるといった具合である

逆に背景にペン色が溶け込んでしまっても見づらくなってしまうのでその点は注意が必要である
白背景と黒背景は人の好みがあるのでなんとも言えないが
後述する露光の問題で影響が出る可能性がある

基本的には整えた背景で撮るというのが大前提である
当たり前のことだが、意外と不完全な人が多いように思う



■カメラについて


ほとんどの人はwebカメラを使って撮影しているのだろうか
まあデジカメの人もいるだろう
基本的にどちらのカメラにも構造的に差はあまりない
ただ設定の自由度という観点で論じればwebカメラが優勢だろうか
好みの問題なのでまあどちらでもよいとしよう

まずカメラの特性から論じる必要があろう
カメラはレンズを通じイメージセンサで光を受け、それを光学的に記録している
人間の目とは実は大きく異なっているのである

自分のペン回しを肉眼で見て
その後カメラで目線と同じアングルで撮ってみたら全く印象が違った
なんて経験はないだろうか

人間の目自体はカメラのレンズと大差ない
なのに印象が異なって見える
それには脳が関係している
人間の脳は非常によくできており「反射的に」見えた情報を見やすいように処理している

錯視の画像を見たことがあるだろうか
同じ長さの直線2本をT字に配置すると、縦の方が長く「見える」という錯覚を起こす
カメラの光学的な記録にはそういった錯覚が映ることはない

動画で魅せるペン回しにおいて、
肉眼で見る印象と撮影した動画の印象に差がある
ということを十分に理解しておく必要がある

そして動画が持つビジュアルが全てなのだ
アングル、背景、露出、トーン、演技、全てが絡んでのビジュアルなのだ
それに至る過程や事情など見る者は知ったことではない

動画が全てとはそういう意味である
「対象の人物を全く知らない上で動画を見てもらう」つもりで撮っていないと
行きとどいていない動画になってしまう



■露出、ホワイトバランス、トーン


カメラのことに関連する
ほとんどの人があまり気にしたことのない項目だと思う
というよりも何のことだかさっぱりだと思うので詳しく解説しよう
そして動画撮影に生かしてほしい

まず露出
カメラは光を受けて画が撮れるという仕組みをとっている
平たく言うとカメラにどのくらいの時間光を当てると丁度いいのか、ということだ
これには絞りとシャッタースピードに関わってくるのだが
絞りはwebカメラにないので説明は割愛

webカメラの露出はシャッタースピード(≒フレームレート)で調節される
1/30秒だとフレームレートは約30(毎秒)という具合である
わざとシャッタースピードを1/25くらいにすれば、
昔のコリアンのフレームレートになったり

ここで注意したいのが、フレームレートを上げると
つまりシャッタースピードが早くなると、1コマあたりの画像が受ける光は少なくなる
フレームレートを上げると動画が暗くなるということだ
その調整がゲイン等で必要だということ
好みの光の加減やフレームレートを探す場合に参考になるだろう


続いてホワイトバランス
ホワイトバランスを調節すれば、白がちゃんと白になる
全く意味が分からないと思うので詳しく説明しよう
先述の通りカメラの目は人間の目とは違って優秀ではないのだ

殆どの人が蛍光灯下での撮影かと思うのだが、光にはそれぞれ固有の色がある
光の強さでもまた色が変わってくる
この度合いのことを色温度というのだが、簡単に言えば
弱い光(白熱灯など)は赤っぽく、強い光(太陽光など)は青っぽく映るのだ

だからデジカメの白熱灯モードは白は青っぽく映り、 晴天下モードでは白は赤っぽく映るのだ
この他にも蛍光灯は固有の緑色が含まれていたりするのだが、
ほとんどみんな蛍光灯下なので説明は割愛

ここを意図的に操作すれば赤→黄色→青の範囲で色味を変えられることになる
私の画質が青っぽいのはホワイトバランスを極端に振っているからである
ホワイトバランスをとればどんな照明下でも「白が白く」映る
つまり肉眼の色味に近くなるということだ

ホワイトバランスはオートでもよいのだが、やはりオートだと若干のブレがある
撮影時に手が映るであろう位置に真っ白い紙を置き、
マニュアルで紙が真っ白に映るように色を調節すれば
より正確なホワイトバランスをとることができる

変な画質にしたいのであればそれはまた別であるが
人の好みもあるので色味に関しては好きなようにいじればよい
あくまで汎用的な設定として紹介しておいた


そして最後はトーン
これは白黒のバランスのことである
一般的に画面の6が黒、4が白 がよいとされている
コントラストの調節でこれは操作することができる

これは自分の目で確認しながら任意のバランスに調節すればよい
ただし白とびと黒つぶれには要注意である
白とびは露光過多(光強すぎ)黒つぶれは露光不足(光足りない)である
この二つはピクセルにデータがない

動画も画像と同じくピクセルの集合であることは多くの人が知っているだろう
それにデータがないとなると、編集ソフトで色調を補正しようとしても
データがそもそも無いので編集ができないので注意
そういった意味でも露出等の設定は重要だ



■フィックスとカメラワーク


フィックスとは三脚などにカメラを固定して撮影すること
カメラワークは俗に言う手持ち
はっきり言って好みなのだがこれにもちゃんとした効果がある

まずフィックスは非常に見やすい
安心して見ることができるのが利点だが、細かなミスが目立つようになる
あと印象として静的なので少しこじんまりしてみえてしまうかも知れない

カメラワークはダイナミックに撮ることが出来る
細かなミスは認識しにくくなる
撮りにくくなってしまうのが難点で、視点のブレが発生しやすく
見づらくなってしまう可能性もある

これもあくまで参考までに
自分に合った撮影方法で撮ってほしい

■構図


堅苦しい言い方だがそんなに難しいことではない
本人の感覚の問題である

ペン回しの動画において中心になるオブジェクトはペン、それと手である
この二つが納まりよく画面に入っていれば問題ない
気をつけたいのは手の位置

手には方向がある
人間は無意識に、指先に向かうベクトルを感じている
そのベクトルの進行方向に適度なスペースがあれば、 見やすい構図になっているということだ

ベクトルの進行方向に対してスペースが空きすぎていたら淋しい印象になるし、
スペースが詰まっていたら見ている者に不安感を与えてしまい、
はらはらさせてしまうことになる
手を画面中央に持ってくれば基本的によい構図になる

構図のセオリーとしてオブジェクトを画面中央に配置させるのは
間抜けな印象を与えてしまうので避けるのだが、ペン回しではむしろこれがよいだろう


もうひとつ構図に関して気をつけたいのは逆さま図である
人間は逆さまの画に対しての理解力がほとんどない
つまり逆さまの画でペン回しなんてされたら全く分からん、
見る気が殺がれてしまう、ということである

これは言葉では説明し難いが、(右利き用で解説、左利きなら逆
撮影しているカメラの位置が、撮影する体勢の右手の中指よりも右側にあるとアウトだ
逆さま図になっている
人間の本能的に見辛いものなのでよっぽどの理由が無い限り控えた方がよいだろう

やはり常に「誰が見ても見やすい」を心がけることで動画の印象は大きく変わる
先述の通り肉眼の印象とカメラの印象は違うからだ
だからこそ自分に合ったアングルを見つけることも大事である
このことも頭に入れておくと考えやすくなるのではないか



■撮影環境論


長々と語ったがいかがだっただろうか
動画撮影に汎用的に使える知識なので是非活用していただきたい
そう、あくまで汎用的なものである
これが全てではない

意図次第ではタブーと呼ばれることも
効果的に使えるかも知れない
それは本人の研究次第だし、意図にもよるだろう

何か撮影環境に関して研究したんだ、という人がいれば是非声を聞かせてほしい
こちらの論にどんどん盛り込んでいきたいと思う





11/07/09 turugi